3. 栽培

3-1. 挿し木

枝の一部を切り取り、土に挿して発根させ苗とする方法。アジサイは挿し木で苗を作るのが普通で、実生は品種改良など特別の目的がある時に行う。

緑枝挿し アジサイは6月頃に挿すと2週間くらいで発根するが、根が張るのを待って8月下旬頃に1本ずつ鉢にあげる。
休眠枝挿し 花芽分化が終わり、落葉した枝を挿すと小さな苗に開花させることができる。ヤマアジサイならミニ盆栽風にして楽しむことが出来る。12月~1月頃に大きな芽をつけた枝の先2~3節を切り取り土に挿す。芽が開いてから発根するので気長に管理する。5月下旬から6月上旬頃に蕾が見えたら、1本ずつ鉢上げをする。
3-2. 赤花用の土、青花用の土

アジサイは土の酸度や成分が花の色に大きく影響するので生産農家では、品種の花色に合わせた土を調整している。青花品種は酸性の土で、赤花品種はアルカリ性の土で栽培される。白花品種は土の影響をあまり受けない。日本の土は酸性のものが多くそのまま使うと赤花品種は濁った紫系の色になる。酸性の土ではアルミニウムが溶け出しやすく、これが吸収され花色を青に傾ける作用をする。アルカリ性の土ではアルミニウムが溶け出しにくくこの作用が抑えられ花色はピンクになる。前年の夏に吸収したアルミニウムが植物体内に保存され翌年の花色に影響するので、今年の花が終わったところから来年の花への準備が必要になる。

ブロックなどコンクリートが多用される都市部の庭では土がアルカリ性になりやすい。

3-3. 赤花用肥料、青花用肥料
アジサイの花色は土の酸度だけでなく土に含まれる成分にも影響される。青花の品種に鶏糞や骨粉・魚粉を含む肥料を与えると、花はピンクや濁った紫になる。これは鶏糞・骨粉・魚粉に多く含まれるリン酸が影響している。リン酸は土の中でアルミニウムと結合して水に溶けない物質を作るため、アジサイはアルミニウムを吸収できなくなり、結局アルカリ性の土と同じ影響を受けることになる。花色に合わせて、リン酸を多く含み澄んだピンク系の花を咲かせる肥料と各成分をバランス良く含み澄んだ青い花を咲かせる肥料が別々に作られている。
3-4. 枝の更新

園芸アジサイは何年も同じ茎に花を咲かせると良い花が咲かなくなる。2〜3年咲かせたら古い茎は根元から切り、根元から伸び出す新しい茎と交代させることが良い花を毎年見る秘けつで、これを枝の更新と呼ぶ。

ヤマアジサイは枝の更新をあまり必要としない。盆栽風の仕立てで風情のある木姿にするには根元から出る新しい枝をすべて花が開く前につけ根から切り除く。このようにして毎年同じ茎に花を咲かせても良い花が咲く。根元から出る新しい枝をそのままにすると古い枝が負けて枯れ込み、作り上げた風情ある木姿を壊してしまう。

3-5. 根づまり、根腐れ
アジサイの仲間は細い根を非常にたくさん作る。狭い鉢の中はすぐに根の団子のようになって水も空気も入らなくなる。根は空気が入らないと死んで腐りだす。気温が高い夏は根腐れが起こりやすい。葉が萎れて水をやっても回復しないときは根が腐り始めていて株ごと枯れることが多い。花が終わったら出来るだけ早く植え替え、空気が良く通るようにすることで夏の根腐れを防げる。コガクウツギとその雑種は根づまりに大変弱いので特に注意する必要がある。
3-6. 元気な枝が突然垂れる、折れる
新しい枝の途中から萎れて垂れ下がる。古い茎がわずかな力でポッキリ折れる。これは害虫の仕業で、シイノコキクイムシという甲虫の1種が茎に楊枝の先で刺したほどの小さな孔をあけ中に入っている。コキクイムシの名の通り体長は1.3~1.7mmと小さいが被害は深刻である。特に古い枝に入られるとせっかく蕾を付けた枝が冬に孔の所で折れてしまう。有効な防除法はまだない。
3-7. ファイトプラズマ(葉化病)を根絶せよ
緑色の花のアジサイがあらわれ注目されたことが今までに何回かある。どれも葉化病という病気の花だった。病原体はファイトプラズマというウイルスより大きく細菌より小さい微生物である。この病原体がアジサイの花の細胞の中で増えて遺伝子の働きを狂わせ花を緑色にしている。病原体の数が少ないと花房の一部だけが緑色になる。伝染経路は不明で、治療法もなく、アジサイ園が全滅したところもあり、発見したら焼き捨てるしかない。
アジサイ百科

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